芝 忠(しば ただし)

神奈川県異業種グループ連絡会議理事
関東学院大学講師。
東京都出身

※国内を初め、韓国・シンガポールなどにおいて異業種交流の普及啓発に貢献。

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 今日のコラム - 2006.10.30 -
西湘サロンの開設
本年三月から小田原駅新幹線口から五分の至近距離、小田原城天守閣を目の前にした会場で「西湘サロン」が開設された。
サロンの趣旨は地域に開かれた拠点として、商工業者・大学人・行政関係者・金融機関・マスコミ・起業家などが集い、自由に情報交換する“場”として「地域開放型異業種交流会」が目標だ。

国際的な情報交流社会への移行に伴いますます多様かつ異質な情報の交流の場や機会の必要性が増している。しかし従来の異業種交流会は、ややもすれば閉鎖的なグループ活動を基本に展開されてきた。
また行政が関与する中小企業支援機関では、確かに相談は「ワンストップサービス」で解決するかも知れないが、経営者らが自由に出入し、相互に交流したいという場合それが可能というわけではない。地方では立派な交流室があっても殆ど使用されていないところもある。
県異グ連は一昨年から横浜地域・川崎地域・三浦半島地域の三箇所で「新産学交流サロン」を開設した。会場や開催日を固定し、六時からスタート、一時間程話題提供があって、七時から八時頃まで簡単なつまみとアルコールでディスカッション。行きたい人はさらに二次会へ行く。僅か千円会費だ。

 本県の人口が大阪府を追い越したが、西の方面は必ずしも増加しておらず、西湘・足柄上の両地域二市八町で、この十年間人口増は南足柄市・大井町・開成町の三市町のみ。中心の小田原市は今や二十万都市から十九万人台へ落ち込み、転入者への助成措置を講じている程だ。サロンでは県西地域に住む大学人や研究者、行政マンらが意欲ある企業経営者・起業家らと交流し、今後の地域発展策を考える。横浜からも参加している。

第一回瀬戸建設、第二回露木木工製作所、第三回しいの食品といずれも地元企業の社長が経験談や会社戦略を発表した。サロン事業は㈶神奈川中小企業センターを始め、県・市や経済団体・大学・神奈川新聞等の支援を受け実施している。こうした場が地域に無数に開設されれば、全く新たな人的ネットワークが誕生し、団塊の世代の活躍の場も広がる。(神奈川新聞2006.7.24)
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 今日のコラム - 2006.10.30 -
公立図書館の変身(中小企業支援)
全国に公立図書館が約三千、うち県内には八一(二〇〇五年、〇二年は六一)。近年は高齢者の利用が増加しているが、逆に少子化の中で子供が本を読まなくなったという声も聞く。
団塊の世代の退職者の増加が叫ばれている中、在職当時利用出来た企業の図書室や資料室が利用出来なくなり、大学や県産業技術センターを利用する人が増えている。こうした中で公立図書館を新たに新規創業支援や資格取得のために利用させようという試みが進んでいる。

我が国では長らく公立図書館が一般の生涯教育の場として利用されてきたが、国家的な新産業育成や環境・福祉等の課題が重要視される中、ビジネス支援にも利用可能ではないかという声が専門家や関係者の中から挙がってきた。これには米国の公立図書館の動きも影響を与えた。確かに、高齢者や女性・若者などは既存の中小企業支援機関を尋ねるより手近な公立図書館を利用する方が馴染みやすい。
二〇〇〇年十二月に「ビジネス支援図書館推進協議会」が設立され、全国で百六〇館ほどが加盟、県内では県立川崎図書館や相模原市図書館などが参加している。ちなみに川崎図書館は社史や特許情報などを揃え、産業図書館として予てから知られてきたが、昨年十月からさらに充実させた。
中小企業者や新規開業しようとする人達を対象に従来の特許相談だけでなく、月2回の相談員の配置(㈳神奈川県経営診断協会の協力)、中小企業支援機関からの参考図書の推薦、資格取得図書コーナーの設置、セミナーの開催など。「推薦図書」は貸し出し希望が多い。
社史は過去の商品開発の実態を調べるのに役立つ。新聞情報検索システム「日経テレコン」も無料だ。他県では相談員にNPO法人が協力している。
こうしたサービスを行うには図書館司書の専門能力の向上が課題で、ビジネスプラン作成、地域性を活かしたビジネスアイデアの発掘、市場開拓の資料収集等商工行政顔負けの知識や手法を身につけさせる県もある。利用者による交流サロンも有効だ。
全国3千の公立図書館がこれらに類するサービスを手掛けるならば、現行の中小企業支援機関の配置数をはるかに上回る地域サービス網が出来上がる。
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 今日のコラム - 2005.04.12 -
県職員のリストラ
民間の「リストラ」による従業員数の減少は近年著しいが、神奈川県庁の職員数もこの15年間で15%以上削減されている。組織数もかつては四百以上あったが、現在は三百である。これは県庁の中心部の動向であるが、いわゆる神奈川県が経費負担している人件費相当職員数は2003年度七六、二一九人に上る。うち市町村立学校職員数は46.2%の三五、二四九人、「県職員数」は53.8%の四〇、九七〇人である。しかし「県職員」のうち警察職員と県立学校の教職員で、ほぼ三分の二を占める。「役人」という概念に当たる知事部局が約一一、二百人、企業庁、教育庁、その他の任命権者(議会事務局、選管、監査、人事委、漁業調整委)を合わせて約二、二百人である。この十五年間で警察職員は6.25%、九一九人の純増であるが、それ以外は軒並み15%以上減員されている。問題は、ゆがみがないか、ということである。県庁では現場機関の統合・廃止などの削減が目につく。いわゆる人事・財政・企画などの「中枢部分」の縮小は相対的に少ない。しかし「企画部門」は各事業部局が「多能工」的能力を身に付ければ「調整的仕事」は不必要である。二年から三年周期の機械的人事異動により、専門職の役割は相対的に低下し、全員が偉大なる「素人集団」になりつつあり、民間の知識に追いつかない。全員が副知事になれるわけではないので、ゼネラリストとしての教育は不要である。むしろ、県職員はもっと地域や分野、部門や施策、事業・テーマなどのスペシャリストとして位置づけられるべきである。自らの蓄積した知識や現場体験、豊富な実態調査に基づくサービスの質で県民の期待に応えるべきである。汚職と経験年数は相関関係が少ない。公務員の倫理感を高めることにより防止可能だ。慣れない仕事に回されることによる精神的苦痛による潜在的病人は3%近いと推定される。短期間の人事異動制度を止めれば、人事部門も縮小可能である。リストラの最後に企画部門は不要だったという民間企業の経験から、不要不急の企画事業の廃止も可能である。全体に地域と県民に奉仕するという「原点」に立ち返って、「権威」ではなく「真のサービス」と「大胆な強者と弱者の調整」を行うことによる存在感が必要であろう。
(04.07.14神奈川新聞 芝忠)
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 今日のコラム - 2005.04.12 -
中小企業支援手法の転換╶╴個別対策から交流型へ
われわれの部署に寄せられる年間相談件数は10年前の約4倍、8千件ほどである。これらの相談は、ほかの中小企業支援機関と同様、担当者が自らの知見の範囲で助言するか、専門家を紹介する。しかし、年々相談内容は高度かつ複合化し、いわゆる専門家と称する人達の知識・経験を上回るケースが少なくない。また、われわれの人的ネットワークにも限りがある。もし「相談しても役立たない」という様な風評が立てば、支援機関の存続は危うい。

今、全国で「産業クラスター(ぶどうの房の意)」づくりが盛んである。これは一つの機関や地域にさまざまな機能やネットワークを集中させて支援拠点にするものである。確かに地方圏では目立つので有効かもしれない。しかし、神奈川県のような大都市圏においては、無数の支援拠点がありながらも前述の事情によって機能低下している危険性がある。

中堅・中小企業やベンチャー企業の場合、既存の専門家の意見を聞くより、同様な悩みを持つ中小企業経営者の体験を学んだ方が有効な場合が多い。また、大都市圏には稠密(ちゅうみつ)な人材が地域に潜在化しており、それらの有能な人材やネットワークを顕在化させることにより、新たな情報拠点になり得る。すなわち、個別的な経営・技術支援対策から、集団的交流型の支援対策に転換を図る必要がある。

われわれは本年から「新産学公交流サロン」として川崎地域(かわさき経済人ネットワークサロン╶╴かながわサイエンスパークで2月から開催)、横須賀地域(三浦半島経済人サロン╶╴神奈川新聞横須賀支社で3月から開催)、横浜地域(神奈川新産学公交流サロンよこはま╶╴エクセレント轡咼襪韮昂遒ら開催)で個人に着目した常設の交流サロンを開設した。ここは参加者相互が交流しあい、自身の課題を自ら発見していく自立型の場である。

こうした交流については既に20年前に「先導的技術開発を推進するためには、水準の高い情報はもとより異質の分野の情報など多様な情報を活用することが必要であり、企業ニーズにあった情報を提供する組織と研究者、技術者が生きた情報を交換できる自由な交流の場づくりを推進する必要がある。」(頭脳センター構想に関する提言1980)としている。今日でも有効であろう。出来るだけユニークな人材を集めたい。(注・頭脳センター構想とは県を知識集約型産業の基地にしようとする構想)
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 今日のコラム - 2005.04.12 -
中小企業新法への期待╶╴新連携時代へ
現在、中小企業庁では新しい法律(中小企業経営革新等総合支援法〔仮称〕)を準備中だ。
現行の3法、すなわち新事業創出促進法(98年12月制定)、中小企業創造法(95年3月制定)、中小企業経営革新支援法(99年3月制定)を纏めて、「創業」「経営革新」「新連携」の3つの支援方向を打ち出す予定。このうち「創造法」は期限が10年と定められているので来年期限切れとなる。

注目されるのは「新連携」で55億円の予算が要求されている。「特徴のある経営資源を有する中小企業などが、新たなビジネスモデルや新しい市場への展開を目標に、
〃戚鵑覆匹琉貭蠅離襦璽襪亡陲鼎、⊆己の欠けている経営資源(技術、マーケティング、商品化等)を相互に補完し、新たなビジネスモデルや新商品等を開発し、せ埔譽法璽困鯒聴した対応力の強い「ソフトで柔軟な連携」を構築する、とある。

実は「創造法」は、旧「融合化法」(88年4月制定、やはり10年の時限立法)の期限切れを前に「融合化組合」事業の振興策を吸収した。
「融合化法」は異業種交流活動の活性化策のうち異業種組合(融合化組合)を作り、その研究開発事業計画を奨励しようとするもので、わが国の異業種交流活動支援の代表的支援法だった。
そのため、「融合化法」が「創造法」に吸収され廃止された時、一部からは「異業種交流時代の終焉」ではないか、と指摘された。
ところが「経営革新支援法」の立案過程で「ゆるやかなネットワーク」すなわち異業種交流のような任意団体の活動を再評価しようという議論がなされ、「中小企業基本法」(63年制定)の大改正(99年12月)にも反映された。
従って、私は「新連携」を新しい異業種交流の発展形態と考える。事実「自己の欠けている経営資源の相互補完関係」とは異業種交流の最大の特徴だ。しかし「新連携」は単なる相互補完関係だけでなく、融合化組合とも異なるある種のビジネスネットワークの集合体を指している。
そこに新しいネットワーク型企業集団の立地環境を支援しようとする狙いがあり、われわれが推進している事業化プロジェクトの方向性も合致するようだ。
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