われわれの部署に寄せられる年間相談件数は10年前の約4倍、8千件ほどである。これらの相談は、ほかの中小企業支援機関と同様、担当者が自らの知見の範囲で助言するか、専門家を紹介する。しかし、年々相談内容は高度かつ複合化し、いわゆる専門家と称する人達の知識・経験を上回るケースが少なくない。また、われわれの人的ネットワークにも限りがある。もし「相談しても役立たない」という様な風評が立てば、支援機関の存続は危うい。
今、全国で「産業クラスター(ぶどうの房の意)」づくりが盛んである。これは一つの機関や地域にさまざまな機能やネットワークを集中させて支援拠点にするものである。確かに地方圏では目立つので有効かもしれない。しかし、神奈川県のような大都市圏においては、無数の支援拠点がありながらも前述の事情によって機能低下している危険性がある。
中堅・中小企業やベンチャー企業の場合、既存の専門家の意見を聞くより、同様な悩みを持つ中小企業経営者の体験を学んだ方が有効な場合が多い。また、大都市圏には稠密(ちゅうみつ)な人材が地域に潜在化しており、それらの有能な人材やネットワークを顕在化させることにより、新たな情報拠点になり得る。すなわち、個別的な経営・技術支援対策から、集団的交流型の支援対策に転換を図る必要がある。
われわれは本年から「新産学公交流サロン」として川崎地域(かわさき経済人ネットワークサロン╶╴かながわサイエンスパークで2月から開催)、横須賀地域(三浦半島経済人サロン╶╴神奈川新聞横須賀支社で3月から開催)、横浜地域(神奈川新産学公交流サロンよこはま╶╴エクセレント�轡咼襪韮昂遒�ら開催)で個人に着目した常設の交流サロンを開設した。ここは参加者相互が交流しあい、自身の課題を自ら発見していく自立型の場である。
こうした交流については既に20年前に「先導的技術開発を推進するためには、水準の高い情報はもとより異質の分野の情報など多様な情報を活用することが必要であり、企業ニーズにあった情報を提供する組織と研究者、技術者が生きた情報を交換できる自由な交流の場づくりを推進する必要がある。」(頭脳センター構想に関する提言1980)としている。今日でも有効であろう。出来るだけユニークな人材を集めたい。(注・頭脳センター構想とは県を知識集約型産業の基地にしようとする構想) |